Cubaseユーザーの皆様、今年もお布施の時期がやってまいりました。
Cubaseの新バージョン「Cubase 10.5」の登場です。
例年のブラックフライデー近辺に発表されることの多いCubaseの新バージョンですが、今年も新たな機能を引っさげてやってまいりました。
新機能が追加される反面、それによる新たなバグに見舞われたり、毎年のようにアップデート料金を支払われられたりと、ユーザーの中には辟易している方も少なくないでしょう。
まあ、スタインバーグやヤマハの中の人とか、御用記者や御用ブロガーの皆様には嬉しいこと盛りだくさんなのでしょうが。
そうは言っても1ユーザーとしてスルーするのも忍びないので、Cubase 10.5の新機能を眺めてチェックしてみることにします。
コンテンツ
- 1 EQ / スペクトラルカーブ比較(Proのみ)
- 2 ビデオレンダリング
- 3 MultiTap Delay(Pro • Artistのみ)
- 4 Padshop 2(Pro • Artistのみ)
- 5 MixConsole チャンネルカラー
- 6 プロジェクトからトラック読み込み(Proのみ)
- 7 MIDI プリレコード
- 8 選択ツールの結合(Pro • Artistのみ)
- 9 スコアエディターの改良
- 10 より簡単なマクロ作成
- 11 LUFS ノーマライゼーション
- 12 セーフスタートモード
- 13 Stereo Delay / De-esser / Roomworks (Elements)
- 14 ワークフローの改善
- 15 総評
EQ / スペクトラルカーブ比較(Proのみ)

いいミックスのためには、各パートの周波数帯域をうまく住み分けることができるかが鍵。チャンネル EQ に新しく加わった比較モードは、オーバーラップする帯域を一目で判別できる強力なツールです。比較したいトラックを2つめのシグナルとして EQ にルーティングし、スペクトラルカーブを重ねて表示。それぞれのチャンネルを切り替えて、正確かつ効率的に EQ を調整することができます。
これまでは他社プラグインが必要だったEQ比較が、標準のEQで可能になりました。
すぐさま使える標準搭載のEQは使う機会も多いので、これは素直に嬉しい新機能ですね。
ビデオレンダリング
映像音楽の作曲は Cubase が得意とする分野のひとつ。ビデオレンダリング機能により、プロジェクトから任意の範囲のビデオをオーディオを伴って書き出すことが可能になりました。これにより作業の状況や完成形のイメージをクライアントと共有することができます。MP4 / H.264 コーデック、48 kHz / 16-bit AAC オーディオを書き出せ、ファイルへのタイムコード追加も可能です。
ビデオ関係の機能は使ったことないのでよくわかりませんが、ビデオ関係の作業時間短縮につながるのかしら?
MultiTap Delay(Pro • Artistのみ)

ミュージシャンに大きなインスピレーションをくれるディレイプラグイン。ディレイループに最大8つまでのタップを設定し、タイミングやパン、パラメーターの調整をシンプルな UI から操作できます。クリーンなデジタルディレイからビンテージエコーまでのキャラクターを選べ、サチュレーションやフィルター、ディレイ成分のローファイ変換、さらにソース音を邪魔せずにディレイを際立たせるダッキングも搭載。エフェクトも完備し、出力だけでなくディレイループ単体、さらに個別のタップ毎の詳細設定も行えます。
新ディレイ追加、やったぜ。
私としてはディレイエフェクトの選択肢が触れることは好ましいことなので、嬉しい新機能です。
ただ、こういったディレイをすでに使っていた人からすれば、特にメリットを感じないかも。
Padshop 2(Pro • Artistのみ)

グラニュラーシンセサイザー Padshop がバージョンアップ。新しく加わったスペクトラルオシレーターが、サンプルを予想もできなかった音の情景へと導き、強力なアルペジエーター / フィルター / エフェクトが音に動きと輝きを加えます。新しい100種類のプリセットから選ぶか、あなた自身の音色を作るか、それは自由です。
標準搭載のシンセサイザーですが、正直なところメインで使っているシンセサイザーを持っている人にとって、そこまで出番のあるシンセでもなさそう。
多分、試しに1度使ってそのままお蔵入りになりそうです。
ですが、今回のアップデートでサンプラートラックからサンプルをインポートできるようになり、よりCubaseとの関係が深まったことによって、もしかしたら出番が増えるのかもしれません。
MixConsole チャンネルカラー

プロジェクトが大規模になるにつれて、チャンネルの全体像を素早く掴むことが重要になってきます。Cubase 10.5 では MixConsole のカラー機能を拡張。各チャンネル背景の色分けが可能になり、視認性が大幅に向上しました。たとえばスクリーンから離れてミックスを確認しているときも、チャンネルをすぐに識別することができます。
チャンネルの色分けができるようになったことで視認性が向上したようです。
私はチャンネルストリップをマメに色分けするタイプ(色分け用のマクロやロジカルエディターも準備している)ので、Cubaseをより便利に使っていけるのではと思っています。
プロジェクトからトラック読み込み(Proのみ)
プロジェクト同士のデータ交換や、新しいプロジェクトのテンプレート作成がこれまでよりはるかに簡単になりました。グループ / FX / フォルダートラックなど多くのトラックタイプの読み込みをサポート。また読み込むトラック属性も詳細に設定できます。たとえば気に入ったドラムミックスを複数のプロジェクトで使いたい場合も簡単です。また、トラック同士の名前が一致する場合の自動マッピングなどのオプションも充実しています。
以前メインで使っていたAbleton Liveにあって、Cubaseになかった機能がここでようやく実装されました。
この辺りは革新的な新機能というより、他社の後追いで実装されたものでしょう。
MIDI プリレコード
録音していない時にいい演奏ができたり、いいアイデアが浮かんだりする、ということはありませんか? Cubase が大昔から搭載している、非録音時の MIDI 入力データ記録機能 (Retrospective MIDI Record) が大幅に向上しました。停止または再生中に演奏した MIDI 入力データを、トラック毎にバッファーに取り込み、後から MIDI ノートとして再現可能。また弾いたコードやメロディを、サイクル範囲にスタックするか、リニアに連続したパートにするかを選択できます。複数トラックの記録にも対応しています。
他社の後追い機能 その2。
Ableton Liveでも「Capture」の名称で実装されていた、録音していないときにもMIDIデータを記憶しておくバッファ機能です。
なくてもそこまで困ることはないけど、何かとあったら便利な機能です。
選択ツールの結合(Pro • Artistのみ)
選択ツール結合モードにより、編集作業をさらにスピードアップします。最も使用頻度の高いオブジェクト選択ツールと範囲選択ツールを同時に有効化し、マウスカーソルのトラックでの上下位置により、自動的にツールを切り替え。パレットでの持ち替えの手間を省き、限られた時間の中で最大限の編集が行えます。
選択ツールと範囲選択ツールはショートカットで適宜切り替えて使っているので、それらが統合されてマウスカーソルの位置で役割が変わるのは誤操作に繋がるんじゃないかと感じています。
私の場合は無理に使うことはなさそうですね。
スコアエディターの改良
大幅に機能強化しリフレッシュ。音符の位置をドラッグで動かす際に、リズミックなタイミングを表す位置ルーラーを表示できるようになり、休符やリピートマーカーの位置決めに役立つグラフィックスナップも追加されました。またマウスホイールを用いて選択したノートの音程を変えることも可能になりました。
スコアエディターをメインに使うことはないものの、仮歌さんに渡すメロディーのスコアを作るときぐらいは使っています。
この改良によってFinaleやDoricoなどのスコア作成専用ソフトを使わずとも、それなりの見栄えのスコアを作りやすくなったのはいいですね!
より簡単なマクロ作成
キーボードショートカット& マクロを表示 エリアを改良。マクロエディター部分のリサイズ、マクロの複製、コマンドの上下など、より扱いやすくなりました。
これは嬉しい!と思う反面、「今更かよ!」とツッコミを入れたくなるタイミングでの改良ですね。
Cubaseのマクロ機能は複雑な操作をひとまとめにできて便利ですが、そのマクロを作るエディターが融通がきかず不便でした。
そういったエディターにちゃんとメスが入ってくれるのは素直に喜ばしいところ。
それにしてもバージョン10.5になるまで頑なにマクロ周りを変更しなかったのは、それだけ利用者が少なくフィードバックがなかったんでしょうか。
LUFS ノーマライゼーション
ダイレクトオフラインプロセシングのノーマライズにおいて、dB に加えてラウドネスユニットを使用したノーマライズが可能になりました。
最近ではYouTubeやApple Musicなどのネット配信サービスでも、ラウドネスを基準とした音量調整が行われています。
Cubaseでラウドネス基準のノーマライズを搭載したのも、そういった昨今の事情を鑑みた上での判断でしょうか。
セーフスタートモード
トラブル対策のために、サードパーティ製プラグインを無効化して Cubase を起動できるようになりました。
サードパーティ製プラグインは便利ですが、何かとトラブルの種になりがちです。
特に音楽とは何も関係ない、システムとかプログラムとかの整合性の分野でトラブルを起こし、順調に進めていたプロジェクトが開けなくなって台無しになってしまった経験がある人も少なくないでしょう。私もそうです。
セーフモードが備わったことで、サードパーティ製プラグインが引き起こす悲劇を回避しやすくなると思います。
Stereo Delay / De-esser / Roomworks (Elements)
Cubase Elements にも Stereo Delay、De-esser、Roomworks を搭載しました。特にボーカル録音において活躍するプラグインです。
Cubaseの各グレードには機能差があります。
このアップグレードでも、その差は広がっています。
そんなグレード間の格差を埋めるための施作でしょう。
ボーカル向けのエフェクトが追加されているということは、レコーディングとちょっとした編集がしたいボーカリストにCubase Elementsを売り込めるようになったわけです。

ワークフローの改善
複数プロジェクトを開いている際に誤って他のプロジェクトが自動有効化される仕様を変更 / オートメーションレーンに実際の Send ターゲット名を表示 / プロジェクトロジカルエディターがフォルダーパートの操作に対応 / サンプラートラックから Padshop 2 へのサンプル書き出し / フォルダートラック追加時に命名可能 / タイムラインのクリックによるサイクルモードの有効化を選択可能
その他、ちょっとした使い勝手の向上や、バグのようや仕様や仕様のようなバグの改善などでしょうか。
プロジェクトロジカルエディターにもちゃんと手を加えているので、ここは私的に加点対象です。
総評
今回は0.5刻みのアップデートということもあり、わりと堅実な内容の改良だと思いました。
私としても、けっこう好印象な内容が多いです。
これでCubase関係者の営業があったら「超いいね!サイコー!」と、死ぬほどべた褒めしていたところです。
一方で、今回の追加機能によって新たなバグが出てくるんじゃないかという不安もあります。
バグがないプログラムは存在しないでしょうが、そのバグを増やす原因を作るアップデートを年1で続ける方針には疑問を覚えるところです。
しかし、地盤を固める堅実なアップデートを望むのはガチで音楽制作に臨んでいるプロなどの少数派。
多くのユーザー、そして企業や販売店、各種メディアなどの多数派が望んでいるのはわかりやすいド派手な新機能と頻繁なアップデートです。
SteinbergやYAMAHAの中の人は、そういった市場原理に従って製品展開しているだけなので、悪くいうのも変な話なのです。
音楽制作ガチ勢は所詮・・・市場の”敗北者”じゃけェ・・・!!!
Cubase 10.5へのアップデートはSteinbergのオンラインストアにてできます。
参考 Cubase Pro, Cubase Artist, Cubase Elements | Steinberghttps://www.steinberg.netまた、Cubase 10のパッケージを購入しても、今ならCubase 10.5を使えるようになっていますので、これからCubaseを使う方であればパッケージを購入しても問題ないでしょう。
コメントを残す