これまでも歌モノのコンペに挑んできた方ならわかるでしょうが、ボーカルパートにVOCALOID(以下、ボカロ)の使用はNGのものがほとんどかと思います。
たまにはボカロOKのコンペはあるものの、メジャーな案件は基本的にボカロNGですね。
2010年代にかけて音楽シーンでは浸透したボカロですが、コンペの現場では締め出されているのが現状です。
なぜボカロを歌モノのコンペでは使ってはいけないのでしょうか?
ボカロNGの理由
ボカロがNGな理由は人それぞれ、コンペそれぞれでしょうが、私が見聞きしたり考えている理由として以下のようなものがあります。
ボカロは人が歌えない曲も歌えてしまう
ボカロとはヴァーチャルシンガー、つまりは歌を歌ってくれるソフトウェアです。
人間に歌唱不可能な歌だとしても、ソフトウェアであるボカロは難なく歌ってしまいます。
歌唱可能な音域は人によってまちまちですが、おおよそ
男性:Mid1D ~ HiA
女性:Mid1G ~ HiD
と言われています。
音域から外れた歌声はクオリティが低くなったり喉のトラブルの原因になったりするほか、そもそも出ない場合もあります。
これは生物としての人間の限界です。どうしようもありません。
一方のボカロにはそんな限界などありません。
一応ボカロにも得意な音域は設定されており、例えば初音ミクなら「Mid2A ~ HiE」が得意とあります。
しかし、実際にはここから外れていてもさほど問題なく歌えてしまいます。
また、ハイトーンの連続や息継ぎなしの曲でも問題なく歌えますし、喉のトラブルの心配もありません。
こんなボカロを相手にしていると、ついに知らず知らずのうちに人間が歌えない曲を作ってしまうものです。
実際問題、ボカロにNGを設けなかった時には歌唱不可能な曲がコンペに提出されることが度々あったので、コンペ担当者の苦労を慮るとボカロNGになるのも無理な話ではないと思います。
ボカロは完成系のイメージを掴みにくい
ボカロの歌は人が歌うイメージを想像しにくい。
これはよくコンペ関係者から聞く話です。
歌モノコンペのゴールは人間が歌うための曲を見つけること。
このゴールに対して人間が歌うイメージが出てこないボカロの歌は、それだけで選考対象外になってしまうのです。
その最たる理由は、ボカロには声にキャラクターが存在することでしょう。
ボカロの声には「初音ミク」や「結月ゆかり」といったキャラクターがそれぞれ与えられています。
そのキャラクターについては音楽にとても詳しいコンペ関係者も当然把握しています。
だからこそ、ボカロの歌はそのキャラクターのための歌という認識になってしまい、人間が歌う様をイメージできなくなってしまうのです。
ボカロは足切り要素
ボカロはボーカル入りの歌モノ曲を作るハードルを下げました。
歌モノを作る最大の障壁はボーカルのレコーディングや編集だったわけですが、それらをソフトウェア的に解決したことで、それまで歌モノを作れなかった人が作れるようになったからです。
さて、コンペには毎回デモが大量に送られてきます。
ビックネームな大物アイドルやシンガーだと数百曲のデモが送られるようです。
もちろん全部にちゃんと人間の仮歌が入っています。
こんな状況下にてボカロ曲までもコンペ参加OKにしてしまった日には、提出される曲は桁が1つ増えてしまうのではないでしょうか。
そうならないためにもボカロをNGにして、少しでも候補を絞っているのではと考えます。
歌モノコンペは人間の仮歌で
今でもボカロNGのコンペは多いです。
それには上述のような様々な理由があるわけです。
また、ボカロNGと明記されていなくても、今回の記事で取り上げたような理由から、ボカロ曲は正当な評価をもらえなくなってしまう可能性もあるでしょう。
ということで、人間が歌う曲のコンペには、ボカロでなく人の声で、しかもターゲットのアーティストに近い声質の仮歌を入れたほうが無難と言えるでしょう。
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