先日、Ableton Live 10 Suiteの機能を拡張する「Pack」に「Creative Extensions」というMax for Liveデバイス集が追加されました。
中身はMIDIデバイス1つ、オーディオデバイス5つ、インストゥルメントデバイス2つの、計8つのデバイスです。
Live 10 Suiteのユーザーであれば全て無料で入手して利用できます。
私の登場してすぐにこれらのデバイスを試してみましたが、どれもシンプルかつ使い勝手がよいので、すぐにでもインストゥルメントやエフェクトのラックに組み込んでみたくなりました。
そんなCreative Extensionsのデバイスたちを1つずつチェックしてみましょう。
コンテンツ
MIDIデバイス
Melodic Steps
Melodic Stepsはメロディステップシーケンサーのデバイスです。
Octave、Transpose、Length、Velocity、Chanceの5つの要素をシーケンスを制御できます。
5つの要素を設定し、キーとスケールを決めてあげれば、その設定に従ったメロディーが生成されます。
もちろんメロディーだけでなく、OctaveとTransposeを一定にすればドラムシーケンサーとしても利用できます。
また、5つの要素は自分で設定するだけでなくランダムに設定することもできます。
画面上の5の目のダイスをクリックすればパラメーターは完全なランダムに設定され、2の目のダイスをクリックすればパラメーターは今の値を基準にランダムに上下させることができます。
こういった神にサイコロを降らせて乱数に身を任せるタイプのシーケンサーは、思わぬメロディーやリズムに出会えることもあるので、制作に行き詰まった時や気分転換してみたいとき、新しいシンセサイザーの音色チェックしてみたいときなどに重宝することでしょう。
オーディオデバイス
Pitch Hack
Pitch Hackは原音のピッチを変えた音をディレイして原音とミックスするタイプのディレイエフェクトデバイスです。
これまでのLiveのエフェクトにはなかった新しいタイプのディレイです。
ディレイ音のピッチ変更もリアルタイムで行えるので、ピッチ関連のつまみをLFOデバイスで揺らし、不安定なピッチ感を演出するのも面白そうです。
Pitch Hackは単なるディレイだけではなく、リバース音をミックスすることが可能なのも特徴です。
インサートエフェクトとしてだけでなく、センドエフェクトのリバースディレイとして使うという用途もありますね。
Gated Delay
Gated Delayはその名の通りゲートディレイ、つまりステップシーケンサーで制御可能なディレイエフェクトデバイスです。
ステップシーケンサーによってディレイを発生させたいタイミングを任意に設定できるので、、例えば「拍の頭だけディレイさせたい」だとか、「フィルの時だけはディレイを切りたい」というような、オートメーションでやろうとすると非常にめんどくさい作業を手軽に行うことができます。
手軽に出来ることはすなわち、さまざまなディレイのパターンを気軽に実験できるということでもあります。
「ディレイの魔術師」を名乗るなら必携のデバイスです。
Color Limiter
Color Limiterはハードウェアをエミュレートリミッターエフェクトデバイスです。
ハードウェアらしくシンプルで少ないつまみとハードウェア特有の温かみのあることが特徴です。
本来の用途であるリミッターとしての利用はもちろん、トラックの隠し味として使ってみるのもいいでしょう。
Re-Enveloper
Re-Enveloperはエンベローププロセッサーとかトランジェントシェイパーと呼ばれるようなエフェクトデバイスです。
最近よく耳にするジャンルのエフェクトですね。
Re-Enveloperは3バンドの帯域ごとにエンベロープの制御が出来るので、例えば耳障りな広域のアタックを弱めたり、中域のアタック感を強めつつかつ低域の余韻を残すという音色の調整が可能です。
もちろん、原音を大胆に加工するもアリです。
ミックスのクオリティーをさらに高めるためにも、トランジェントをしっかり支配しましょう。
Spectral Blur
Spectral Blurは音に「ぼかし」を加えてリバーブのような音に加工するエフェクトデバイスです。
普通のリバーブと違うのは指定した帯域にのみリバーブ効果を加えるということでしょうか。
そのため他のリバーブとは得られる音が異なってきます。
いろいろ実験してみたくなるデバイスです。
もちろん、センドトラックにアサインしてもオッケー。
思いつく限りのことを試してみましょう。
インストゥルメントデバイス
Bass
Bassはベース音に特化したモノフォニックスシンセサイザーデバイスです。
Live 10 SuiteにはAnalogというバーチャルアナログシンセサイザーのインストゥルメントが既にありますが、BassはAnalogと異なり5つの基本波形をそれぞれ混ぜ合わせてフィルターとアンプを通して音作りします。
Analogとは一味違う音色を試してみたい時に使ってみましょう。
なお、このBassは以前よりMax for Liveデバイスとしてあったのですが、こちらはLive 10 Suiteに合わせてバージョンアップしたもののようです。
Poli
Poliはバーチャルアナログポリフォニックシンセサイザーデバイスです。
PoliはBassのように4つの基本波形から音を作り出します。
加えて、幾つ物モジュレーションや内蔵のコーラスエフェクトを駆使することにより、複雑な音色の和音を奏でることができます。
ちなみにPoliもBassと同様、以前よりMax for LiveデバイスとしてあったものをLive 10 Suiteに合わせてバージョンアップしたもののようです。
これらは全て自分なりに改造が可能
本記事で紹介してきた8つのデバイスはLive 10 Suiteのユーザーならばすべて無料で入手できます。
ですがこれらのデバイスと同様の機能を持ったサードパーティー製のプラグインは既にあるわけで、無料だからといってもわざわざこっちを使う必要もないと考える人もいるでしょう。
しかしそれは早計、こちらのデバイスはMax for Liveデバイスであることを忘れてはなりません。
Max for Liveデバイスであるからこそ、自分自身でデバイス改造することもできるのです。
これはサードパーティ製のプラグインには無いメリットですね。
ぜひデバイスを改造して自分色に染めてみてください。
ちなみに私はさっそくMelodic Stepsに手を入れて見ました。
パラメータを一気にランダムに変えたいと思ったので、全部のパラメータのランダムボタンを押すボタンを増設してみました。
こういった思いつきの機能をすぐさま実装できるのがMax for Liveデバイスのいいところですね。
Live 10 Suite使ってみよう
今回のように新デバイスが無料で使えるようになったり、それらをMax for Liveで改造できたりすることで使い勝手を良くしたりオリジナリティを出せるのもまたLive 10 Suiteの良いところです。
Liveの基本的な機能はIntroやStandardのグレードでも使えますが、よりディープにLiveを使うならSuiteにバージョンアップすることをおすすめします。
また、既に他のDAWを使って言いながらもこの記事を読んでいる奇特な方も、ぜひLive 10 Suiteとの二刀流を検討してみるのもいいでしょう。
DAW二刀流により、これまでとは違った音楽性に出会えるかもしれませんので。

それでは、ぜひ自分なりの方法でLive 10 Suiteを使いこなしてみてください。