音楽制作環境にiPad Proを導入してからしばらく経ちます。
上記の記事を書いたあたりからiPad Proでの制作環境を色々妄想し、実際に手に入れられたのはその2ヶ月後ぐらい。
それからもiPad Proに満足に触れなかったり、iOSアプリ特有の作法に悩ませられたりと、なかなか思うようにiPad Proで曲を作るに至れませんでしたが、ここにきてようやっとiPad Proでも音楽制作を行えるようになってきました。
といったところで、音楽制作の視点からのiPad Proをレビューしていきます。
それにしても一般用途、ビジネス用途でのiPad Proのレビューは出揃ってきていますが、音楽制作におけるiPad Proのレビューってあんまりみかけません。
それだけ、iPad Proで本腰を入れて音楽制作にあたっている人が少ないということでしょうか。
2018/03/28追記
私は結局、iPad ProからMacへメイン制作環境を戻しました。その理由は以下の記事を参照ください。

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iPad Proのメリット
画面が大きい
iPad Proは画面が大きいiPadです。
一般用途だと画面が大きいというメリットを享受できる機会が限られてくるため、この部分は評価されにくいポイントでした。
ですが、音楽制作においては大きなメリットです。
音楽制作において画面が大きいということは、それだけ1画面に詰め込める情報が多くなるということです。
画面が大きければ各パートの音量や定位、音符の並びなどの情報をより多く一覧することができます。
画面移動の操作なしにたくさんの情報を見れれば、それだけ効率よく作業できるようになります。
処理能力が高い
iPad ProはA9Xプロセッサーを搭載したことにより、従来のiPad Air2よりもCPU性能が1.8倍になっています。
CPUの処理能力が高ければ、それだけ重たい処理が可能になります。処理能力は高いに越したことはありません。
音楽制作においてはDAWの同時再生可能なトラック数を増やすことができる、複数の音源やエフェクトを同時に利用できるなど、Mac/PCを用意しなければならなかった処理もできるようになります。
私的には50トラックほどを動かせれば大抵の音楽制作作業はなんとかなると考えています。
iPad Proでもフリーズ機能を駆使してやりくりすれば余裕をもたせて可能です。
独特な音楽アプリが使える
iOS向けにはタッチ操作を活かした音楽アプリがあります。
これはMac/PC用のシンセサイザーアプリにはない特徴です。
例えばこの「Fingerlab Musyc」。これは楽譜やピアノロールを使わずに作曲できるアプリで、図形や壁を自在に配置し、物理演算によって動く図形同士がぶつかることで音を奏でるというものです。
このように既存の作曲フローにとらわれないアプローチでの作曲ができるため、楽譜や楽器とにらめっこしていただけでは見つけられない、新たな音の発見があることでしょう。
アプリが安い
iOS用のアプリはMac/PC用のアプリと比べると安いです。
CubasisやAuria Proなどの本格的なDAWが1万円以下で手に入れられます。
Mac/PC用のDAWならば、1万円程度のものなら安い方で、上位版は5万円ほどするのが普通です。
その代わりにMac/PCのアプリよりもオミットされている機能なんかがあったりします。
iPad Proのハードウェアのスペックゆえに仕方のないことです。
そういう部分とどうやってうまく付き合うかが、iPad Proによる音楽制作の鍵でしょうか。
iPad Proのデメリット
ストレージ容量が少ない
128GBはタブレットとしては大容量ですが、音楽制作用のコンピューターとしては容量が心もとないものがあります。
完了したプロジェクトはiPad Proから外部ストレージに積極的に移すようにしないといけません。
こんな外付けのストレージもありますが、何かと割高です。
なのでストレージのやりくりは大切です。
Lightning端子が1つしかない
iPad Proと外部機器を接続するためのLightning端子は1つしかありません。
そのため、接続できる機器が1つに限られます。
様々な外部機器を接続することが多い音楽制作において、このデメリットを払拭するのは厳しい物があります。
ですが、MIDI over Bluetooth対応のMIDIキーボードやコントローラーなら、ワイヤレス接続できるために1つしかないLightning端子を専有せずに済みます。

本ブログでも過去記事でワイヤレス接続可能なMIDIキーボードを取り上げています。
こういった機器を積極的に利用していきましょう。
また、ワイヤレス接続未対応の従来のMIDI対応機器を複数コントロールしたいなら、QUICCO SOUNDの「mi.1」やYAMAHAの「MD-BT01」および「UD-BT01」を使うことで、従来のMIDI機器をワイヤレス化できます。
YAMAHA MD-BT01 ワイヤレス MIDIアダプター
アプリ間の連携が煩雑
iPad ProにはiOSが搭載されています。
そのため、iOSの仕様により1画面で操作できるアプリは1つ、スプリットビューに対応したアプリなら2つまでです。
音楽制作ではPCにおいても1つのアプリの機能だけで完結するケースは限られています。
大抵は幾つものアプリをプラグインしています。
数十GBに及ぶピアノ音源、実機と比べての遜色ないギターアンプ、はては今までにない効果を備えたエフェクト。
こういった様々なプラグインアプリを時と場合に合わせて組み合わせています。
iPad Proにおいてもアプリを組み合わせて音楽制作をすることは変わりません。
アプリ間の連携はAudiobus、IAA、WISTなどでできますが、一度に操作できるアプリは基本的に1つまで。
この辺の連携がうまくできるか、あるいは割り切れるかが、iPad Proにおける音楽制作の鍵となってくるでしょう。
最近にはMacのDAWでプラグインを扱うように、iPad ProのDAWでも音源やエフェクトを拡張できる「Audio Units Extention」の規格が生まれ、Audio Units Extentionに対応したアプリも登場していますが、それでもスペック的な問題で多用するのは少々厳しいのが現状です。
iPad Proは人を選ぶ
結局iPad Proで音楽制作するのは実用的なのかという問に対しての答えは、人によるとしか言えないものがあります。
私がiPad Proでも音楽制作していけると思った理由は以下のとおりです。
- 今までもハードウェアの音源やエフェクト、生楽器が制作環境の中心だった
- ミックスは音量や定位の調節程度しかしない(エフェクトを含めた音作りは素材を並べた時点で終わっている)
- iPad Proでできること、できないことをちゃんと把握している
- iPad Proでできないこと(ボーカルの微調整など)はMacを引っ張りだしてできる
今までの環境がMac/PCをフルに活用していたものだったなら、iPad Proへの移行は現実的なものではないでしょう。
反対にMac/PCをMTR代わりにしか使っていなかったなら、iPad Proはマッチングするでしょう。
また、これから音楽制作を初めてみたいという初心者なら、iPadやiPad Proから初めて見るというのもアリですね。制作環境揃えやすいですし。
2018/03/28追記
ただやはり、iPad Proは制作に関しては何なくこなせるものの、それ以外の部分で苦労を強いられることが多くなったため、結局はiPad ProからMacへメイン制作環境を戻しました。その理由は以下の記事を参照ください。

iPad Proで制作した曲
最後に私がiPad Proで制作した曲を紹介しておきます。
ここまでiPad Proについて語ったんだから、ちゃんと曲ぐらい作ってます。
こちらはAuria ProでOctatrackに読み込んだサンプルを録音して制作した曲です。
最初は操作に手間取っていたので、思った通りに制作できずもどかしい思いをしていました。
そしてこっちはKORG GADGETで作ってみた曲。
iPad Proではタッチ操作で音色をコントロールできるので、Macで作ってた頃よりもパラメータをリアルタイムに変化させる音作りを試しやすそうです。
KORG GADGETは最近アップデートして、より使いやすくなりました。
iPad Proでの音作りはこのアプリをメインに行うことになりそうです。
こういうのは数をこなして徐々に道具に慣れていくしかないです。
これからもぽこじゃか曲をアウトプットして、iPad Proを自分のものにしていきたいものです。