言葉の乱れというものはどの世界にもあること。
当然、音楽関係の世界においてもその例に漏れません。
そんな乱れた言葉の中でも、私が大いに違和感を覚えるのが「デジタル臭い」という言葉です。
「デジタル臭い」ってどういう意味?
そもそもデジタル臭いってどういうことなのでしょうか?
デジタル臭いという言葉を使うのは主に音楽関係の人たち、とりわけギタリストがデジタル回路で構成されたエフェクターやアンプシミュレーターに対して好んで使っています。
肝心の言葉の意味ですが、
- 中音域が物足りない
- 音色の印象がわざとらしく偽物っぽいい
- 雑味(ノイズ成分)がなく綺麗すぎる
- 思い通りに音色が変化しない
- とにかく気に入らない
などと様々な意味があるようで、はっきりとした意味はわかりません。
ただ、どれも否定的な意味であることは伺えます。
デジタルというものを正体もわからないまま親の仇のように嫌っているのでしょう。
とにかく、デジタル臭いとは人によって意味するところが違う、とてもハイコンテクストで曖昧な言葉です。
中には端から見て「単に使いこなせてないだけじゃん」と思えるようなことを、あたかも機材が悪いかのように責任転嫁するために使っているケースも見受けられます。
ですが、こんな聞き手にとって不親切極まりない言葉が当たり前のようにまかり通っているのが現状です。
ちゃんと「音が悪い」って言いなよ!
何かを否定したり批判したりする気持ちになるのは仕方ないことです。
ですが、そうやって否定するにしても「○○○が悪い」とか「○○○が足りない」とストレートに言ってほしいものです。
「よくわからないけど、とにかく気に入らない」みたいな小学生並みの感想だっったとしても、気に入らないことがちゃんと伝わるだけ「デジタル臭い」なんて言葉よりマシです。
「デジタル臭い」という言葉は使えば玄人っぽく振る舞えたり、一言で対象を全否定できたりするので、使う人にとってはこれほど便利なものはないのかもしれません。
ですが、聞き手の立場からすれば何を意図した発言なのか、何が良くて何が悪いのかを判断するのが困難です。
私はこんな「デジタル臭い」って言葉が嫌いです。
この言葉を好き好んで使う輩は自分のことをギターの玄人だと思い込んでいる精神異常者ではと思うほどにです。
「デジタル臭い」なんて奇怪な言葉を積極的に使う人は、少なくともプロを名乗らないでいてほしいものです。
「デジタル臭い」は卒業しよう
「デジタル臭い」なんて言葉を使わなくても、音の良し悪しはちゃんと言語化できます。
例えば、
「中音域に物足りさなを感じるが、それをいくらイコライザで補正しても払拭しきれない。」
と言えば、「デジタル臭い」の一言ですませるよりも、発言者の意図と評価ポイントがよりはっきりします。
音の感想を述べるにしても、
「果物味の駄菓子のような、安っぽくて薄っぺらいわざとらしさを感じる。」
と言い換えれば、「デジタル臭い」なんかよりも想いが伝わります。
また、自分が何を思っているかを改めて言葉にすれば、言葉にしないままでは気がつかなかった解決の糸口が見つかるかもしれません。
そのためにも、「デジタル臭い」なんて言葉を使うのはもう卒業しましょう。